帰省していとこや親せきとにぎやかに温泉につかった後、いつもは生ビールなのに浴衣に合わせてふと日本酒を選んだことがあります。
風呂上がりにすーっと喉を通る冷酒は水みたいな飲み口とキレの良さを兼ね備えていて、普段飲む日本酒とは異なり、とても贅沢な気持ちになったのが思い出されるのです。
この記事ではそれをきっかけにすっかり日本酒党(辛口・純米酒好き)になった私が、冷酒で飲むと一段と美味しくなる日本酒の種類からおすすめ銘柄まで詳しくご紹介します。
日本酒の温度別の呼び方について
冷酒という言葉が出てきましたが、日本酒でこれは何度くらいのお酒を指すのかご存知でしょうか。
実は日本酒には温度により呼び方が10種類存在するのでそれぞれご紹介します。
①冷酒(5~15℃)
- 雪冷え(5℃前後)
- 花冷え(10℃前後)
- 涼冷え(15℃前後)
②冷や(20~25℃)
③燗(30~55℃)
- 日向燗(30℃前後)
- 人肌燗(35℃前後)
- ぬる燗(40℃前後)
- 上燗(45℃前後)
- 熱燗(50℃前後)
- 飛び切り燗(55℃前後)
人間の味覚において酸味は温度に左右されず感じることができますが、甘味・旨味は低温や高温では感じ方が弱くなり、苦味は高温で感じ方が弱くなることを踏まえると、細やかな味わいを大切にする日本酒文化の奥行きの深さを感じることができるでしょう。
冷酒で飲むのに合う日本酒の種類とは?
冷酒で日本酒を飲むと、よりすっきりと飲みやすくなります。
ではどのような種類の日本酒を冷酒にすると初心者でも美味しく飲むことができるのでしょうか。
冷酒の3種類の温度帯それぞれで考えてみましょう。
①雪冷え(5℃前後)
甘味や旨味が最も感じにくい温度帯であることを考えると、雑味もまた抑えることができるのがメリットと言えます。
このため味が若く雑味のある無濾過(濾過をしない日本酒)や生酒(火入れをしない日本酒)を雪冷えで飲むとより癖のないすっきりした味わいが楽しめるのではないでしょうか。
②花冷え(10℃前後)
花冷えは華やかな香りが立ち爽やかさを感じることができる温度帯のため、純米吟醸酒や純米大吟醸酒などの吟醸香を楽しむ日本酒がさらに美味しく飲めます。
③涼冷え(15℃前後)
冷やより少しだけ温度を下げた状態なので、冷やで美味しい日本酒を飲みやすくするのがこの温度帯にする目的と言えるのではないでしょうか。
このことから味の個性がはっきりしている純米酒を涼冷えで飲むのがとてもおすすめです。
冷酒で飲むのに合う日本酒の銘柄とは?
爽やかさと水みたいな飲み口、そしてキレの良さを求めて日本酒を冷酒にすることを考えると冷酒で飲むのに最適な日本酒は日本酒度が高く酸度が低い「淡麗辛口」の日本酒だと言えるでしょう。
それぞれの温度で飲んでおきたい日本酒のおすすめ銘柄をご紹介します。
雪冷えで飲みたい而今(じこん)純米吟醸 雄町無濾過生
而今 純米吟醸 雄町無濾過生(日本酒度±0 酸度1.7アルコール度16.5%)は三重県名張市にある文政元年(1818年)創業の木屋正酒造株式会社で造られている日本酒のブランドの1つです。
6代目蔵元の大西唯克(ただよし)さんによって2005年に立ち上げられ、品質へのこだわりからきちんと温度管理のできる販売店にしか出荷されません。
そのような日本酒であるからこそ温度にこだわって飲むのにふさわしいと言えるのではないでしょうか。
雪冷えでも米の甘みが強くふくよかに広がり、後味はキリリと引き締まるのが而今らしさです。
参考:而今 純米吟醸 雄町無濾過生のページ
花冷えで飲みたい作(ざく)雅乃智中取り(みやびのともなかどり)純米大吟醸
作(ざく)雅乃智中取り(みやびのともなかどり)純米大吟醸(日本酒度非公開 酸度非公開 アルコール度16%)は三重県鈴鹿市にある明治2年(1869年)創業の清水清三郎商店で造られている日本酒のブランドの1つです。
もろみを絞る際あらばしりと最後の責めの部分を取り除き、一番酒質の安定した中取りの所だけを集めて造られました。
地元鈴鹿市出身の内山智広杜氏が「日本一の純米大吟醸酒」を目指して醸したお酒は、美しさや綺麗さを代表するようなお酒と表現されます。
花冷えで華やかに香り立つ吟醸香とフルーティな味わいを楽しみましょう。
参考:雅乃智中取り 純米大吟醸のページ
涼冷えで飲みたい特別純米酒 白神山地の四季
特別純米酒 白神山地の四季(日本酒度+1 酸度1.5 アルコール度15~16%)は秋田県大仙市にある1964年創業の八重寿銘醸株式会社が造っている日本酒のブランドの1つです。
低温長期醗酵の技術を持つ山内杜氏がじっくりと仕込んだその味は、「淡麗旨口」と表現されるのです。
涼冷えですっきりとした香りと、米の持つ深みのある味を存分に楽しんでみてください。
参考:特別純米酒 白神山地の四季
まとめ
冷酒には雪冷え・花冷え・涼冷えの3種類の温度があり、日本酒の種類や銘柄によって温度を変えると、初心者にとってはより飲み口が良くなることがわかりました。
暑い夏こそ淡麗辛口の日本酒を冷酒にして、爽やかな気分を楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いたライター
紫媛(さきひめ)
秋田生まれの日本酒大好きWebライター。
仲間においしい日本酒をすすめたり、行きつけのお店 の日本酒の仕入れの相談にのったりと楽しく日本酒とつきあっている。
最大のライバルは唎酒大会で優勝した父親。
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日本酒アドバイザー 宅飲家(たくのうち)の中の人
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